とりプロなう71号

第10回第2部門審議会開催

2017年2月20日(月)16:00-18:20、衆議院第2議員会館会議室にて、選挙市民審議会第10回第2部門審議会が開催されました。

太田光征委員と桂協助委員の選挙制度私案がそれぞれ提示され、8名の委員と市民傍聴者を含めて熱心な審議が行われました。

市井の選挙制度研究家たちが憲法学者・法律家らの前に自説を展開。さまざまな角度からの吟味を受け、手に汗握る攻防となりました。これぞ選挙市民審議会の醍醐味。

太田光征委員

(「平和への結集」をめざす市民の風代表)

 

持論は「中選挙区比例代表併用制」を衆参両院の選挙制度とすること。

たとえば、500の議員定数とした場合、5人区を100とする。有権者は二票を持ち、選挙区の候補者と、全国の比例代表非拘束名簿(政党も無所属も作成できる)に投票する。

選挙区においては無所属候補が当選した場合には当選を確定させるが、政党候補の当選は確定させない。総定数500から無所属の当選者数を差し引いた議席を、比例区の政党・無所属の得票数に基づいて各党・各人に比例配分する。

比例区では第2位まで投票可能。第1希望の候補者が議席を獲得できなかった場合にはその死票を第2希望の候補者に移譲できる。

なお、選挙区で無所属を当選させた選挙人の名簿投票は無効とする。 

桂協助委員

(選挙制度研究家。『民意をよく映す衆議院議員選挙制度――比例代表中選挙区統合制』の著者)

 

持論は「比例代表中選挙区統合制」を衆議院に導入すること。

たとえば議員定数を480とした場合、選挙区定数を300とし、追加配分定数を180とする。また、総定数を人口比でブロックに分ける。

各ブロックで2人区か3人区を編成する。政党は同じ選挙区で一人しか立候補させることができない。ただし、ブロック単位の「広域候補者」を立てることができる。

有権者は一人一票を持つ。政党名での投票も可とし、その政党の候補者への投票とみなす。

選挙区で定数内の候補者を当確とする。その後得票率2%以上の政党に追加配分議席を配分する。総定数から得票率2%未満の政党・無所属の選挙区当選者数を差し引いた議席数を対象に、全国得票数に比例して投票率2%以上の各党の取得議席枠を定める。

全国の取得議席枠をブロックごとの得票数に比例して、ブロック議席枠を定める。それをまず選挙区当選者で埋め、残りが各党の追加配分議席となる。 

田中久雄委員

太田案における「無所属」の定義は何か。定義可能か。無所属のふりをする政党候補者が出るのでは。「政党」に固定観念がありすぎないか。現行の政党要件を緩める議論をすべき。

桂案がゆるやかな二大政党かつ多党制までもくろんでいることに疑問。選挙区で強い政党に議席を誘導しすぎ。

小林五十鈴委員

選ぶ方から考えると小選挙区制は問題だった。当時は政党助成金で何とかなるだろうと思っていた。よく政策を調べて選べる選挙、運動規制の少ない楽しい選挙が良い。

只野雅人共同代表

太田案は本来の趣旨が逆手に取られる。中選挙区時代の自民党のように、「公認+1(未公認)」のインセンティブが働く。

桂案が一政党一候補者としていることは、憲法の保障する立候補の自由に触れるかもしれない。一票制が中小政党には厳しいかも。


伊藤朝日太郎委員

桂案では、「選挙区においてこの候補者を落としたいが、この政党は支持したい」という選択肢が奪われないか。無所属候補に投票した場合、また2%未満の政党に投票した場合は、政党選択にならなくなる。

山口真美委員

太田案の全国一区、非拘束名簿・無所属名簿から選ぶということは、投票者に負担を強いている。選挙民からすれば「無所属だから投票する」というものでもない。

桂案では、特定の地域に強い政党が不利になる。

小澤隆一委員

太田案では「政党」の定義も問題になる。日本の政治文化にどういう影響を与えるか。さらに「政党隠し」「人物本位で争点隠し」を助長しないか。

桂案はオリーブの木のような名簿連合も許容しているか。そうであれば地域政党にも配慮になる。


【選挙市民審議会の予定】

第1部門審議会 3月2日(木)17:30-19:30 衆議院第2議員会館第8会議室