とりプロなう75号

選挙市民審議会 第8回第3部門審議会開催

2017年4月3日(月)15:00-17:00、衆議院第2議員会館第5会議室、とりプロ選挙市民審議会の第8回第3部門審議会が開催されました。

今回の議題は首長選挙改正。まず大山礼子委員から、二元代表制の原則的な話と日本の二元代表制の特徴について発題がありました。

次に、事務局が、過去の決選投票制が現在の再選挙制に変わった経緯を説明。そして具体的な改正案として、①決選投票、②移譲式選好投票に絞って提示しました。

傍聴市民も巻き込んでの熱い協議の結果、次回5/12の審議会で決選投票制度再導入を骨子とした改正原案を大山礼子委員が提示することとなりました。

韓国視察(2月実施)の報告は、6月以降の全体審議会で三木共同代表を中心にして」なされることとなりました。こちらも乞うご期待。

大山礼子委員

 

現行の二元代表制を例えば戦前にあったような議員内閣制に変えうるだろうか。憲法との関係でも無理。

二元代表制は議会側で安定多数を作る必要はないので、選挙制度を自由に構想できる。

日本の二元代表制は、議院内閣制に近い、強い権限を首長・行政側が持っている。条例案・予算案を行政が出しうる。

「大きな権限を持っているのだから、ちゃんとした方法で選びなさいよ」と言うことはできる。

立候補の機会を拡大するために現職議員が辞職しなくても立候補できるようにしたらどうか。

移譲式の弱点は面倒なところ。オーストラリアのように義務投票制度でもなければ、有権者の投票離れが起こりうる。ましてやそれ以上に複雑にすべきではない。

むしろ決選投票の方が有権者は燃える。法定得票をかつての8分の3よりも過半数にするのが筋だと思う。かつてのような票割れ減少は今は少ないだろう。

三木由希子共同代表

 

首長に比べて議会が弱いという日本の現象は、政策・議員活動支援が無いことに大きな原因がある。各議会の努力では追いつかない問題なので改善すべき。決選投票を再導入したら、さらに首長が「過半数の正統性」を盾により強くならないか。

中間答申で出した地方議会議員選挙改正案(都道府県は比例、市区町村は制限連記)とうまく適合するかも目配りしたい。

どこに改正の柱を置くか。今までの議論では「政策本位に選ぶ」「多様な人の立候補」が柱。有権者が当事者意識をより強く実感できる制度への改正が望ましい。「自分たちの行動で政治が変わる」という意識を盛り上げたい。

移譲式の弱点は当事者性が薄いことにある。

決選投票再導入の場合、大小の自治体一律に導入した方が良い。無投票当選は小さな自治体に多い。そこにこそ多くの立候補があるべき。

桔川純子委員

(議長)

 

選挙制度には分かりやすさが大切だと思う。移譲式の弱点は分かりにくさでは。誰もが分かる制度が望ましい。

韓国視察では、日本で注目されている韓国の選挙管理委員会よりも、さらにリベラルな「教育官(公選で選出される。日本でいう教育長)」たちが主導する主権者教育が印象的だった。京畿道だけではなく、多くの自治体が我をこぞって主権者教育条例を作っている。

5/9の大統領選でも選挙権を持たない若者たちも「投票」し、その集計結果を公表するとのこと。大いに参考になる。

太田光征委員

(第2部門委員)

 

議会選挙の一人区と首長選挙との区別はあるか。たとえば首長選の案が、国政選挙改正案に影響するか。

立候補しやすくなる制度の改正に賛成。

分かりやすさは重要か。むしろ分かりにくくても最新の数理学上の知見を生かした、世界初の選挙制度を追及する試みがあってよい。移譲式に賛成。決選投票では二大政党制に集約されていかないか。

ただしオーストラリアの移譲式では、コンドルセのパラドクスが起こり得ないか。たとえば第1位票が最下位の候補者の中に、第2位票で見れば一番好まれているという候補者がいるかもしれない。

もっと精緻な制度を追及すべきではないか。

桂協助委員

(第2部門)

選挙制度の分かりやすさは民主制度を築いていく上での分かりやすさといして大切。

決選投票制の再導入が良い。それによって政策論争が喚起される。移譲式ではそれが見えにくい。

ただし、決選投票までの間の期間に、第3位以下の態度表明をはっきりさせることが必要となろう。政党間の裏取引などが行われないようにする仕組みも同時に考えるべき。

自由民権運動まで遡ればもともとは政治参加意識は強いはず。現状の政治参加がはばかられる政治風土を変えていきたい。

城倉啓

(とりプロ事務局長)

戦後まもなく首長選挙には決選投票があった。法定得票が有効投票の8分の3(37.5%)とされ、全員がそれ以下の場合は上位2名の決選投票だった。1952年に公選法が改正され、現在の法定得票4分の1(25%)と再選挙制度が導入された。

今までの議論を受けて決選投票の再導入か(参考はフランスの制度)、移譲式選好投票の新規導入(参考はオーストラリアの制度)のどちらかにしたい。

きめ細かい民意反映のための移譲式新規導入に賛成だが、当事者性が薄い・面倒なので投票離れの恐れありとの批判には反論がない。

決選投票制再導入の場合、かつての論点を乗り越えているものでなくてはいけない。決選投票は穏健中道派に有利という効果をもたらす。

傍聴者からも積極的な質問・意見が出されました。

「他国よりも首長権限が大きい理由は、制度以外にもあるか。行政職員の方が専門知識が多くパワーを持っているように感じているが」

「フランスでは地方議会首長が国会議員と兼職できると聞くが実態は」

「多選は癒着の温床。首長権限を弱める意味でも二期に限るべきでは」

「決選投票で中道寄りになるという効果は、極端な候補者の当選を避けるということでもある」

 

【今後の選挙市民審議会の予定】

第1部門審議会 4月  6日(木)17:30-19:30衆議院第2議員会館 地下1階第8会議室

第2部門審議会 4月24日(月)10:00-12:00

第3部門審議会 5月12日(金)16:30-18:30

第2部門審議会 5月24日(水)10:00-12:00