とりプロなう80号

選挙市民審議会 第13回 第2部門審議会開催

2017年5月24日、衆議院第1議員会館第3会議室にて、とりプロ選挙市民審議会の第13回第2部門審議会が開催されました。この日の審議内容は、小澤隆一委員作成の「選挙制度改革案の評価基準案」についてです。

 

小澤隆一委員

選挙制度改革案の「評価基準」になりうるのは以下の11の点であろう。

その選挙制度において・・・

1)投票する権利、立候補する権利の平等が担保されているか(選挙権の平等性)

2)民意が正確に鏡映しになっているか(代表の正確性)

3)地域、党派、ジェンダー、世代、階級等、多様な代表が選ばれているか(代表の公平性)

4)簡素な制度によって、投票の結果選ばれたという関係が明確となっているか(制度の簡明性)

5)政治算術を生まず、特定党派に有利または不利とならないか(制度の確実性)

6)民主主義の発展に貢献しているか(政治参加の促進性)

7)政策中心の選挙となるか(政策論議の促進性)

8)議員総定数や選挙区の規模は適正か(代表と有権者の近接性)

9)代表の政治責任を問えるものになっているか(代表の有責性)

10)二院制・議院内閣制とかみ合っているか(統治制度との適合性)

11)自由・平等・公平・平和という憲法要請にかみ合っているか(憲法適合性)

 

田中久雄委員

憲法は人権をベースに書かれているが、憲法に位置づけられていない政党が現実の政治において重要なファクター/アクターとなっている。政策論争と言っても政党抜きには考えられないと思う。比例代表によって、ポピュリズム政党は確かに台頭しうる。それで良いのでは。民意の反映と共に新規参入や新陳代謝があれば良い。

 

桂協助委員

定量的な観点のみに偏っては駄目。政策論争を促す仕組みが担保されているかがより大切ではないか。そして政策論争は死票を多く生みうる。定量的に死票が少ない制度は必ずしも良い制度ではない。比例代表の場合政策論争は活発になる。議会での多数派形成・連立政権は憲法の枠内。簡明性と柔軟性において田中案は優れている。衆参の制度を同じくする憲法上の根拠は何か。

  

太田光征委員

評価基準の中で大切なのは「定量性」ではないか。民意の反映をどの程度まで実現すべきか諸々の定量性を定めなくては、選挙制度は完結しない。憲法にある「厳粛な信託」「全国民の代表」という高いハードルを、「全力をあげて」追求すべき。死票の最小化はここから読み取れる。死票を生む阻止条項に反対。桂案は投票行動と政党構成まで誘導している。選挙区で落選しても、全国で支持を得て当選することには理がある。「全国民の代表」。衆参で制度を変える憲法上の根拠は何か。

  

小林五十鈴委員

国民の教育が必要だと思う。選挙に強い候補者は有権者と頻繁に話をしている。衆議院は前のように中選挙区に戻して、同じ政党同士で選挙戦を戦う方が、今よりも良くはないか。その際に制限連記制を導入してはどうか。選挙区で落選した候補者の比例での復活当選はやめたほうが良い。有権者にとって分かりにくい。政治家は覚悟をもって立候補してほしい。

  

伊藤朝日太郎委員

政策論争を定量的に評価できるのだろうか。政党を考える場合に、「あるべき政党」か、「現実の政党」か、どちらを想定しているのか。制度設計にあたってはあるべき政党ではなく、現実の政党を前提に議論すべきだろう。あるべき有権者の行動も期待すべきでない。現実に「選挙互助会」のような政党がいっぱいある。現実に有権者の行動も、政党よりも人柄、人柄どころか「名前を知っているから投票する」っていう投票行動が多いことも前提に議論しなくてはいけない。

  

只野雅人共同代表(今回の議長)

審議を受けて以下の6点を評価基準としたい。

1)死票の問題。有権者が選択できる制度か。

2)政策論争。共通の政策を括り出す制度か。

3)近接性。有権者が候補者とのコミュニケーションを実感できる制度か。

4)参入のハードルが低い制度か。

5)個人の選好を狭める拘束性が少ない制度か。

6)簡明性。複雑であっても有権者にとって分かりやすい制度か。

なお、事務局からも要請があった議員総定数の課題(削減一辺倒ではない)にも取り組む。    

 

 

次回は、今回絞り込まれた「6つの評価基準」に照らし合わせて一覧表を作成し(只野代表担当)、以下の6つの衆議院選挙制度案を吟味します。

①太田光正委員提案の「中選挙区比例代表併用制」

②桂協助委員提案の「比例代表中選挙区統合制」

③田中久雄委員提案の「裁量型政党名簿式比例代表制」

④小林五十鈴委員提案の「中選挙区制限連記制」

⑤ドイツの「小選挙区比例代表併用制」(只野代表紹介)

⑥アイルランドの「単記移譲式比例代表制」(只野代表紹介)

6-7月に諸制度の絞込みを参議院も含めて同時に行い、8-9月にまとめて、10月に衆参選挙制度改正素案を第2部門として確定する予定です。


【今後の選挙市民審議会の予定】

6月15日(木)17:00-19:00 全体審議会 衆議院第2議員会館 B1 第8会議室

6月21日(水)13:00-15:00 第2部門審議会 参議院議員会館 1階 102会議室

7月25日(火)14:00-16:00 第1部門・第3部門合同審議会