とりプロなう104号

2018年12月21日、第二期選挙市民審議会の第10回目の審議会が開催されました。

この日のテーマは「憲法改正のための国民投票運動と選挙運動との関係」「選挙管理実務の問題点と改善案」でした。

担当は山口真美委員と太田光征事務局員です。

        山口真美委員
        山口真美委員

 

山口真美委員

 

現行の国民投票の仕組みには課題がある。国会議員によって成る「国民投票広報協議会」が改正案についての公報をするが、中立性が担保されるか。中立的第三者機関を立てるべきではないか。

国民投票運動は「憲法改正案に対し賛成又は反対の投票をし又はしないよう勧誘する行為」と定義される。規制だらけの選挙運動と異なり原則自由。このことは評価できる。例外的に禁止される行為は組織的多数人買収。構成要件が曖昧。また、投票事務者・特定公務員・教育者等の地位利用も禁止される。

投票日前14日のみ広告放送が制限される。

一般国民の意思表明の機会が積極的に保障されていない。

資金力の多寡が影響を与えるのは有料意見広告の分野。①テレビCMの制限または禁止、②無料広告放送枠の付与制度の充実、③資金力において劣る運動者に対する資金助成などが必要では。

60-180日間の国民投票運動期間のうち最後の14日のみの規制では短すぎる。

広告規制のあり方については諸外国を参考にすべき。スポット広告は不可でも新聞広告は可とする国もある。

イタリアでは独立行政機関(委員9名)によって、国民投票運動・選挙運動・報道を監視している。

選挙運動と国民投票運動には投票という共通点と、相違点がある。

改正案と元々の案(現行憲法)の紹介が必要。改正したい側が三分の二を占める広報協議会でそれができるのか。

       太田光征事務局員
       太田光征事務局員

 

太田光征事務局員

 

現状の選挙管理実務には以下のような課題がある。

有効票/無効票の判断基準が曖昧。現場の選管ごとに判断を委ねて良いのか。同じ名前の候補者が複数いた場合だけでなく姓名が混記された場合も按分が必要では。抜本的には自署式投票の廃止が必要では(記号式投票は名簿の順番が論点となる)。

選挙の効力に関する異議の申し出と再選挙の確定が重なった場合に再選挙の日程が長期にわたり決まらない問題もある。異議の申出に対する決定などの期限を義務化できないか。

選挙実務の不正と人為的ミスを、透明性・公正性の見直し義務化、最優良事例の共有化、罰則強化によって予防できないか。

選挙公報の戸別配布を義務化して平等性を確保できないか。

投票困難者への公的投票補助の拡大を図れないか。

        田中久雄委員
        田中久雄委員

 

田中久雄委員

 

国民投票運動は、選挙運動に比べて長期間にわたって自由に活動できる。

投票の誤記は起こり得る。自書式は世界的にも珍しい。外国人の国籍取得者も増える。秘密投票の観点からも、この際に記号式投票を提案して良いのでは。

        片木淳共同代表
        片木淳共同代表

 

片木淳共同代表

 

「国民投票運動」は「政治活動」に含まれるのか。

広告以外でもお金はかかる。国民投票運動に規制が必要という主張が、選挙運動にも規制が必要だという論に流れることを懸念する。

規制をテレビCMに限定する理由は何か。

選管に委ねている限り現場の判断を重視すべき。

投票困難者への補助の拡大はすでに『答申』に盛り込んだ。今後も障害者参政権連絡会にも意見を聴取したい。

         坪郷實委員
         坪郷實委員

 

坪郷實委員

 

改憲発議の前提は、一般国民に改憲条文が広がっており、それが政党を動かしているということ。一般国民の意思表明の保障が必要なので国民投票運動を「原則自由」としていることを評価する。あまりにも資金力の差が影響するものに限定した規制を。その根拠づけをする議論が必要。

公報を担う「中立的第三者機関」のイメージは。イタリアではどうか。

記号式投票への改正はかつてかなり煮詰まっていた。

       只野雅人共同代表
       只野雅人共同代表

 

只野雅人共同代表

 

フランスもイタリア同様独立行政機関が公報・広報を監視する。

国民投票法の立法過程では、選挙運動との相違点が強調された。しかし、共通点に着目するという考え方もありうる。

       三木由希子共同代表
       三木由希子共同代表

 

三木由希子共同代表

 

国民投票において日頃の政党の政治活動と切り分けて改憲原案だけを議論することは事実上不可能ではないか。競争の前に、前提となるルール作りを丁寧にすべき。

改正の要不要を議論する際に、結局政党に議論が戻ってくる。

記号式投票については選挙制度との関係も議論しなくてはいけない。『答申』で地方議会選挙に制限連記導入を謳っている。

        小林五十鈴委員
        小林五十鈴委員

 

小林五十鈴委員

 

特養老等の福祉施設における参政権の保障は重要な問題。公報・投票などをより充実させるべき。

         小澤隆一委員
         小澤隆一委員

 

小澤隆一委員

 

憲法審査会でかなり議論を詰めて、その改正原案を国民に周知させないと、適正な判断のためには60-180日でもかなり短い。

民放連は「表現の自由」を理由に規制に慎重姿勢。CM規制にも課題がある。

異議の申し立てについては十全に保障されるべきだが、関連する課題と共にトータルに検討すべき。

       城倉啓事務局長
       城倉啓事務局長

 

城倉啓事務局長

 

前回までの議論で、「立候補後選挙活動期間(仮)」を90-120日で設定しようとしている。選挙運動と国民投票運動を同じような考え方に統一できないか。原則自由とし、例外的に項目を列挙して「それら諸項目の総額を上限規制する」という具合に。

政治資金・公費負担・政党助成金の改正案については、片木淳・只野雅人・三木由希子の三共同代表と小林幸治委員・坪郷實委員、さらに有志の委員によって「作業部会」を構成し、5月までに2回ほどの会合をもって策定していくこととなりました。

国民投票運動との関係についても、次回山口真美委員に改正素案を提出していただき、さらにもう一度5月までに審議を重ねることとしました。



【今後の選挙市民審議会の予定】

 

1月29日(火)15:00-17:00衆議院第2議員会館第3会議室

 請願制度。小林幸治委員担当

 国民投票法改正素案。山口真美委員担当

 地方議会・首長選挙に関する声明。事務局桂協助担当

 

2月26日(火)15:00-17:00国会議員会館内会議室

 罰則規程。仲道祐樹さん(早稲田大学社会科学部教授、刑法)報告。

 国政選挙と地方議会選挙の積残し課題整理。田中久雄委員・桂協助事務局員担当。